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本能(ほんのう)とは、動物(人間を含む)が生まれつき持っていると想定されている、ある行動へと駆り立てる性質のことを指す。

 

定義

メリアム=ウェブスター辞書では本能を次のように定義している。「判断を伴わず、環境の刺激によって引き起こされる個体の複雑な反応で、遺伝的で変 更がきかない」。しかし本能という用語は歴史的に非常に多くの意味で用いられてきてた。現在でもしばしば全く異なる意味で用いられる。従って本能という語 が使われた場合、それがどのような意味で用いられているのかを確認する必要がある[1]動物行動学者パトリック・ベイトソンは代表的な意味として次の九つをあげた[2]

  1. 生まれたとき、あるいは発達の特定の段階で存在する性質。
  2. 学習なしでも存在する性質。おそらくもっとも一般的な用法。
  3. 遺伝的である性質。高い確率で世代を超えてみられる性質。
  4. 進化の過程で形成された性質。
  5. 役に立つようになる前にすでに発達している性質。
  6. 種、性、年齢などを同じくするグループに共通する性質。
  7. 動物の行動の一部。例えば狩猟、体を綺麗にするなど。
  8. 専門化された神経構造を持つ性質。現代神経科学、認知科学ではこの意味で用いられる。例えば顔認識、感情、表情などを司るモジュール
  9. 発生的に強靱で、経験からの影響を受けない性質。発生生物学で用いられる。

精神分析では本能を性や攻撃行動に関連する情動として説明する。エロスやデストルドーと呼ばれることもある。

 

概要

通俗的には母性本能闘争本能などのように性質を現す語を伴い○○本能という形式で使うことも多い。

専門分野では通常は本能という語の使用は避けられる。動物行動学の他、心理学神経行動学神経生理学などの分野では実際の行動に対して本能行動という表現を用いる。このばあい対概念は学習行動である。

行動は「本能的なもの」と「非本能的なもの」というように二種類に分けて論じられることが多い。また経験は行動の獲得に、遺伝子は本能に影響を与えると言及される。しかしこのような単純な二分法には動物行動学者からも反対がある。例えばハキリアリは分業化が非常に進んでいるが、分業は与えられた食物によって決まる。同じ遺伝子型が全く異なる行動の表現型を生み出す。望むだけ食事をした母ラットの子は体が大きくなるが、少ない量の食事を与えられた母ラットの子は体が小さい。後者の子ラットは豊富な食事を与えられれば食べ続け肥満となるが、しかし前者の子はそうしない。子ラットの行動(本能)は母胎の状態の影響を受ける。カッコウの オスは幼鳥の時代に遠くで鳴く同種のオスの鳴き声を聞いて求愛のさえずりを学習する。しかし他種のオスのさえずりを学習することはない。このように行動は 発達過程で遺伝子、母胎の状況、環境と経験など様々な要因の影響を受け形作られる。したがって、ベイトソンの視点では、行動を学習と本能という二つに分け る事は行動の理解の役に立たない[2]。行動を学習か生まれつきかで二分しない立場は行動生態学などでは標準的である。

これは生物の性質のどのような側面に注目するかの違いでもある。神経行動学などではある神経の構造や働きが行動にどのように影響を与えるかに注目す るため、学習の影響を受けない固定的な行動が研究の対象となりやすい。一方で学習そのものも遺伝的な基盤があり、進化によって形作られたいわば「本能」で あり、行動生態学の視点ではどの程度学習や経験の影響を受けるかの程度の差でしかない。

 

ヒトの本能

人間に本能があるかどうかはながらく議論の対象であった。しかし前述の通り人間に本能があるかどうかは「本能」の定義次第である。一般的に人間に本能行動はほとんど無いかわずかであると見なされている。また社会学哲学、心理学の一部では本能を「ある種の全ての個体に見られる複雑な行動パターンで、生まれつき持っており、変更がきかない」と定義する[3]。この定義の元では性欲や餓えも変更がきくために、本能とは言えないと主張される。極端な行動主義環境決定論においてはあらゆる種類の「本能」が否定され、行動はすべて学習の結果として説明される。

一方で認知科学、人間生物学(特に社会生物学人間行動生態学行動遺伝学)などの分野では人間に本能を認める。ただし本能という語ではなく、生得的、遺伝的基盤がある、生物学的基盤がある、モジュールを持つ、と言うような表現を用いるのが通例である。これらの分野で用いられる「本能」は3,4,8の意味のいずれかである。この場合、本能的と見なされることが多い性質には次のような物がある:言語の獲得利他主義嫌悪などの感情、ウェスターマーク効果学習バイアス(例えば甘い物はすみやかに好むようになるが、苦みや渋みは好みとなるのに時間がかかる)など。また類人猿と人間では公正さの感覚も本能的であると考えられている。

やや特殊ながら、ほとんど全人類に共通の好意的な挨拶を紹介しておく。まず目を見つめ、眉を少し上げ、数秒そのままで、それから頷くというものである。これは、大人が赤ん坊を見て、あやそうとするときには自然に現れる。ヒューマン・ユニバーサルズも参照のこと。

 

自然主義的誤謬

本能という語は「戦争がなくならないのは人間に闘争本能があるためだ」のように特定の好ましくない行為(攻撃行動人種差別性差別な ど)を正当化する際にも用いられる。また逆に、そのような説明は好ましくない行為を正当化するために行われているという非難を伴うことがある。しかしある 性質が本能的であることと、それが倫理的、道徳的に好ましいかどうかは別の問題である。「説明」(○○は本能的である)から「規範」(○○と振る舞うべき である)を引き出すことを自然主義的誤謬、逆に規範から説明を引き出す事を道徳主義的誤謬と呼ぶ。自然に訴える論証も参考のこと。

 

出典

  •  
  1. ^ 例えばスティーブン・ピンカーの著書『言語を生み出す本能』に関してマイケル・トマセロとピンカーの間で論争が起きたが、その一部は本能の定義が原因であった。
  2. ^ a b http://www.science.org.au/sats2007/bateson.htm Cognition and instinct by Professor Sir Patrick Bateson
  3. ^ Sociology: An Introduction - Robertson, Ian; Worth Publishers, 1989

 

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